AI は私たちの生活を変えるかもしれない未来の技術ですが、実際のところ、システム化されて市場に展開されているものはどのぐらいあるのでしょうか?
完全自動運転(レベル5)の車はまだ公道を走っていませんし、無人店舗もまだ限られた数店舗のみですね。
AI は今、ほとんどが PoC(Proof of Concept)と呼ばれる実証実験のフェーズが中心です。PoC を行うことで、AI が本当に有効かを見極める段階にあります。ここで実際に使えると判断されてようやく、市場への展開が見えてきます。
ところで私は、無人店舗が大好きです。コンビニやスーパーで、店員とコミュニケーションをとるのが得意ではないのと、後ろに人が並ばれていると、「早く会計しないと!!」とテンパってしまいます。
そこにきて、並ばず、もしくはすぐに会計できる無人店舗は私のストレスを解消してくれる夢のようなシステムです。今回は、無人店舗の例をいくつか紹介します。
まず、無人店舗の代表と言えばAmazon Go です。
お客さんはスマートフォンを片手に、棚に並んでいる商品を自由に買い物カゴに入れ、そのまま店舗を出るだけで自動的に会計まで完了する、まさに夢のような未来のシステムです。Amazon Go ではカメラの映像から AI による商品認識や、棚についている重量センサーなどの技術を複合させて、お客さんが何を購入したかを判断しています。これによっていちいちレジで会計する必要がなくなり、人手やレジそのものを削減することができます。
Amazon GO については、以下のサイトでより詳しく説明されています。
無人店舗 Amazon Go の仕組みと未来の小売業
Amazon Goは海外の話になりますが、日本の無人店舗はどうでしょうか?
現在の主流はセルフレジになります。その中でも代表的なものは2種類、セミセルフレジとフルセルフレジになります。
セミセルフレジ : 商品のスキャンは従業員が行い、支払いのみをお客さんが行うもの。 フルセルフレジ : 商品のスキャンから支払いまですべてお客さんが行うもの。
これらは両方とも従業員の削減に効果がありますが、フルセルフレジはレジの従業員分をすべて減らすことが可能であるのに対し、セミセルフレジは従業員をすべて減らすことはできません。一方で、フルセルフレジはお客さんがスキャンするためにレジの回転は遅くなります。他にもメリット・デメリットはありますが、いずれも完全有人のレジよりは効率的になります。
セルフレジについては、以下のサイトで詳しく説明されています。
セルフレジとは
ここで、いくつかセルフレジの写真を紹介します。
1. セミセルフレジ (2022.1.18)
スーパーで見かけたので撮影してきました。従業員がバーコードでスキャンをし、会計時にお客さんがここに移動してきます。上部にはAXIS製の監視カメラがついていました。
2. フルセルフレジ (2022.01.22)
こちらのドラッグストアはフルセルフレジになります。バーコードリーダーがついていますね。前回撮影したスーパーもそうですが、セルフと言うこともあり、しっかり監視カメラが付いています。
2. フルセルフレジ (2022.01.29)
こちらのスーパーもフルセルフレジになります。前回同様、お客さん自身がバーコードリーダーでスキャンを行います。使用したところ早速エラーが発生しました。後ろにちらっと見えますが、有人レジがあり、店員さんに復旧してもらいました(笑)。
このセルフレジの過程を経て、ようやく Amazon Goのような無人店舗が市場に広がってきます。日本での無人店舗の代表と言えば「TOUCH TO GO」です。JR赤羽駅や、高輪ゲートウェイ駅、ファミリーマートの無人店舗のニュースなどをご覧になった方も居るかもしれません。あれらは TOUCH TO GO によって実現されています。基本的には Amazon Go と仕組みは同じで、カメラ映像と重量センサーによって複合的に判断しているようです。しかしながら、いずれの店舗も PoC としてまだ実験段階の域を出ていません。
無人店舗が広がれば利便性もますます高まると思います。しかし、現在は限られた店舗のみになっています。この原因なんでしょうか。
いくつかあると思いますが、私は技術とコストの2つだと考えています。
まずは AI の性能です。お客さんが数人の場合は、AI は棚から商品を取ったことを問題なく認識できると思います。では、ものすごい混んでいる店舗ではどうでしょうか。お客さんが入り乱れ、あらゆる方向から商品が取られます。映像からお客さんを見失うかもしれません。
Amazon Go や TOUCH TO GO では重量センサーなども併用した複合技術でこれらの課題を解決しようとしています。一方で、重量センサーを棚につけた場合、非常にコストがかかります。既存の棚につけられない場合には、店舗の棚をすべて交換する可能性もあります。それを考えると、当面は従業員を雇い続けていた方が効率がいい、と判断する店舗も少なくありません。
また、商品の多さも課題です。コンビニでは約2,500商品、スーパーは更に数万商品と、AI の認識が必要な商品が膨大です。外観のデザインから認識するとしても、新商品が常に出続け、既存商品のパッケージも常に刷新されていく中で対応していくのは非常に難しいです。
PoC を行うことで、現在の AI技術だけでは難しい課題も多々あることが浮き彫りになっています。AI も万能ではないのです。一方で、既存技術との合わせることで課題を解決できる可能性も十分あります。ここに PoC を行う意義があると考えます。
Amazon Go も TOUCH TO GO も、PoC を経て市場に広がってくることを楽しみにしています。
TOUCH TO GO については、ファミリーマートが2024年までに無人店舗を1000店舗に増やすと言っています。ここからも市場化はあと一歩なのかもしれません。
ファミマ の無人決済店舗1000店にみる、コロナ禍で 2極化するコンビニの成長戦略
無人店舗の状況について紹介しましたが、ここから現在の AI の実力や課題が見えてくると考えています。無人店舗は一般の人々が使用するため、想定されるケースに限りがありません。会計ミスは許されませんし、万引きなどの対策も必要です。それ以上のケースもあるかもしれません。AI のフィジビリティを測る上では、これ以上の環境はないでしょう。
まとめると、次の3つの理由から、無人店舗をみれば現在の AI の実力、課題が分かります。
1. 無人店舗を使用するのは一般の人々 どういった使われ方をされるか、想定されるケースに限りがないため、AI技術がどこまで対応できるか。 2. 費用対効果がシビア 従業員の代替とするだけの価値があるか。既存の設備からリプレイスする価値があるか。特にスーパーやコンビニは、商品の単価が小さいためコスト感がシビア。 3. AIが認識する商品の多さ コンビニで2,500商品、スーパーは数万商品と、AI の認識が必要な商品の多さが桁違い。さらに常に新商品、パッケージの刷新が行われる。
無人店舗は、常に最新の AI でこれらの課題に対する解決策を模索しています。このことからも、無人店舗の動向を追うことで、AI の技術動向を知ることができます。